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1日1つの「日本的!」な楽しみ


by michiru-hibi1007

八幡様の初卯祭           乙卯(きのと う)の日・旧暦1月27日

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鳥居には巨大なたわし??
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いやいや、藁で編んだ蛇です。

川崎市白幡八幡大神の初卯祭には、こうして鳥居に大きな蛇が飾られます。
初卯祭は、正月最初の卯杖・卯槌の行事があって、東京でも亀戸天神内の御嶽神社が祭日になっていましたが、それ以外に、旧暦2月に今度は八幡様の初卯祭があるようです。
といっても、八幡様すべてで行われているというわけではなくて名称や祭りの作法も千差万別。

まずは、大元である八幡神社の総本社、大分県宇佐市の宇佐神宮
ホームページによれば、それに類するものは、春・冬に行われる春・冬致祭のよう。それぞれ、2月と11月に7日間の祭期があって、酉を初日・子日を中日・初卯日を祭上として、毎日祭典が行われるそうです。

それでは関東圏はどうか...と探しても、代表的な八幡さまである鎌倉八幡宮でも、深川の富岡八幡宮でも行われている気配はありません。
やっと調べが付いたのが、写真の神奈川県川崎市・白幡八幡大神と千葉県市川市・葛飾八幡宮とのふたつ。これらの初卯祭は、「八幡様のお誕生日が卯の日であった」ということをよりどころに行われているのは共通ですが、葛飾八幡宮は、立春後初の卯の日がその日、今年なら2月5日で、たいがいは2月の上旬。
白幡八幡大神は3月最初の卯の日というので、今年は今日の3月1日。
...といった具合に、なぜだか、おひとりの神さまの誕生日なのにかなりのズレ、整合性もありません。

おっと、そういえば、八幡様は、一般的には応神天皇を主神として、比売神、神功皇后を合わせて八幡三神。おひとりでもありませんでしたので、その誕生日というのは、いったい何を根拠とされたのでしょうか?
謎は深まります。

しかし、どちらも、神さまの世界のお話だし、細かいことはまあいいか...と思えてしまえる。
この二社の初卯祭は、白幡大明神の藁大蛇を見ても察せられるとうりに、なかなかに面白い神事が執り行われる日でもあるのです。
本日は、この大蛇を見るため、はるばる川崎市まで出かけてまいりました。

この大蛇は、長さ1丈(約3m)、体や顔は藁で網、角は牛蒡、舌は長い人参を2つに裂いたもので出来ています。目も野菜ですが、大きな蕪でしょうか?
尾のほうを眺めてみれば、木片で作った剣までたてられ、荒っぽいがユニークで面白い意匠、けっこうな迫力です。
この蛇の意味は不詳なのですが、白幡八幡大神のホームページによれば、この行事は八幡講、現代的に言えば八幡信仰をよりどころとする地域のグループが担い手となっているそうです。講の構成メンバーで、それぞれ協力して「大蛇を作る」「的を作る」「お高もり」(椀に飯を高く盛り上げたもの)を神様に供えるなどしてお祭りを盛り上げる。地域の人々に支えられる祭日でもあるのです。
「鳥居の蛇」が、藁と野菜を材料に手作りしたものならば、「的を作る」の「的」もずいぶん凝った造りのようです。
まず、夏の日よけの「よしず」に使われる、葭(よし)を潰して平らなひも状にして、それを網代(あじろ)に編んだ土台を造り、和紙を貼るといった具合。これを大小2つ作って、「大的」は、境内で行われる「射術の儀」に使い、「小的」は神前に供えるのだそうです。
「射術の儀」は残念ながら見られませんでしたが、儀式の射手は5歳未満の男の子がふたり。しかも長男にしかその栄誉は与えられないそうです。
これは、五穀豊穣を願う神事で、八幡様は、武士から崇敬された武運の神ですが、ここでは、農耕神でもあるのですね。

一方、葛飾八幡宮の初卯祭は終わってしまいましたが、こちらはまた趣を違にします。
メインの神事は「湯花神事」と呼ばれ、当日は、境内には、青竹としめ縄を張った結界が作られ、その中央には煮えたぎる大釜が据えられます。
大釜に前では、宮司による厳かな神事が執り行われ、最後に、煮立った「神湯」を熊笹で四方の参詣客に振り掛ける儀式。
これは、神意が湯のしずく=湯花にこもって、人々の無病息災と家内安全の守りを授けてくれるものとして、古くから行われてきた原始的神事なのだそうで、人々はその湯を掛けられるのを楽しみに集まります。
そして、参拝者にとってのクライマックスは、すべての神事が終了したあと。だれもが先を争うように斎竹の小枝を取り合い、湯釜につけて家に持ち帰るのだそうです。
「日本年中行事辞典」(角川書店)にあたれば、「この笹を家の屋根に挿しておけば悪霊除なり、田の水口に立てておけば水に困らない」といういわれがあるそうで、こちらも、農業神への祈りという位置づけの祭日のようです。

ということで、由来などに関してはなかなかつっこんだところがわからない八幡様の初卯祭。
なもので、本日は神事というより、レクレーション紹介のような気分で恐縮です。
たいがいの祭といえば、そのご祭神が共通ならば結構その様式も、細かなところは違っていてもおおむね同じ。それが普通と思っていたら、そうでもないこんなケースが登場。
これは、折に触れ八幡様に関して調べる必要がありそうで、我が日本文化の奥深さをまたも垣間見た気がします。
ちょっと探せば、実際にこんな行事がどこかで長く続けられ、地元の人々によって守られている。しかも、こうして新参者の好奇心まで掴んでしまう。
まったくもって、わが国、日本はとても面白い国です。
by michiru-hibi1007 | 2011-03-01 09:51 | 年中行事・祭・縁日