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1日1つの「日本的!」な楽しみ


by michiru-hibi1007

食べる桃の木             辛丑(かのとのうし)の日・旧暦3月14日

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この地の桃は、大振りの花。

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農家は、夏の収穫に向け、花摘みにいそしんでいます。

東京の桃花は、木々も少なく花屋で求めて愛でるものでしかありませんが、福島の桃花は食べるために育てるものです。
東の桃の産地は、今が、そろそろ桃花の咲き始めの頃。
温室で育てたそれより大振りの花が、昨日蕾の状態だったと気を許していると翌日いっせいに咲き、ぼんやりした耳に、急にドサッと花咲く音が聞こえるかのようです。

桃の節供は、もうとっくの昔に終えたこともあって、「ええっ、いまごろですか?」と、一瞬不思議な気持ちで薄桃色の花を眺めてみますが、旧暦でいえば、今は、まだ3月の中旬。ずっと昔のくらしなら、桃の節供じたいも、たった10日ばかり前だったという次第で、今こそが、本来の桃の季節です。

江戸風俗研究家の杉浦日向子さんの著書に、江戸の春の花見の様子が書かれてあって、まずは、庭園などを少人数でそぞろ歩く梅見に始まり、桜見は植樹した下で大人数の無礼講、そして桃見は、その最後に、山郷などに家族でハイキング風に出かけて愛でるもの。
江戸人たちは、この三種の花をそれぞれの作法で愛でて初めて春が成立すると考えていたのだそうです。

山郷でなくとも、桃の畠は、薄桃色の花で覆われ、桃源郷とはこのことかといった佇まい。
あの木々の下で、密かにお弁当でもいただこうか...などと思ってもみますが、産地の桃は、仕事の相手。早いところは、花の剪定もはじまっています。

花を惜しまず落としてゆけば、夏には見事な水蜜桃。

桃は、イザナギノミコトが、黄泉の国から逃げ果せるための立役者。背後から追いせまるイザナミノミコトと雷(いかづち)、黄泉醜女(よもつしこめ)。それらから逃れるために、イザナギは、黄泉と現世の境・黄泉比良坂(よもつひらさか)に生えていた桃の実を投げて難を逃れました。

以降、日本で桃は、邪気を祓うチカラを持つと考えられた、非常に特別な果物です。
だから、今年も今年こそは、山の向こうからじわじわと押し寄せてくる邪気を祓ってはくれないだろうか。
...と思わないではいられません。

ふと...。
桃の木の脚立の下で遊んだ幼い頃。
選定されて落とされた桃花を拾って喜ぶ、美しくものどかな記憶が、よみがえってきます。
by michiru-hibi1007 | 2011-04-16 18:30 | 植物のこと