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1日1つの「日本的!」な楽しみ


by michiru-hibi1007

お富士さんの植木市     壬子(みずのえね)の日・旧暦5月25日

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江戸時代の昔、江戸市中では富士山信仰が非常に盛んで、信仰にゆかり深い浅間神社を勧請したり富士講の組織創りがなされたりとさまざまなことが行われてきました。
特に、今でも、都内に多く残る富士塚は、富士登拝が難しかったその時代に、富士を模してそれを創りそこを登れば富士山に登ったのと同じ霊験があるとされたもの。当時、江戸の各所に造られ、今でもその多くが残されています。
それら富士塚は、本物の富士山の山開きにあわせ、きたる7月1日がお山開きです。
現代でも盛大に開山祭が執り行う神社が数社あり、普段は見物するだけの富士塚にも実際に上ってお参りすることも可能だったりもして、今も人気の年中行事のひとつです。

浅草の観音様の裏手から北に少しいったところにある浅草浅間神社も「浅草富士」と呼ばれる、富士信仰ゆかりの神社。
そこには、富士塚こそありませんが、あたりより一段高いところに設けられた神社そのものを富士山にみたて、やはり7月1日に山開きの行事が行われます。

その縁日の露天市が、5月と6月の最終週末に行われる、お富士さんの植木市。
月をまたいで市が2回も行われるのは、旧暦時代の開山祭が、6月1日だった名残り。かつては、今のように変則的に日程がずれるのではなくて、6月1日と前日、前々日に加え、月遅れの7月1日とその前日に祭りと植木市を行っていたようです。

山開きに由来ある市というのに、現代は一緒に行われないのがやや不思議な感じもしますが、都内の街中でこんな大きな植木市を見ることもあまり無く、出かけてみる価値は大です。

浅草富士の開山祭は、江戸時代はもとより、明治に入ってもずいぶん大きなお祭りだったらしく、浅草生まれの児童作家、渋沢青花氏の『浅草っ子』を紐解けば、子供の目から見た楽しい祭りの様子が生き生きと描かれていました。

縁日で売られているのは、まず、「マキ、杉、南天などの立木をはじめ、ナデシコ、百合などの鉢植えを並べ、じょうろでぞんぶんふりかけた露の玉がカンテラのあかりにキラキラ光っている」とあって、しかし、こどもの興味はお菓子やおもちゃのほうへ。
「あやめ団子、竹かんろ、葡萄餅」など「こどもを誘惑するような露店が両側にすきまもなくぎっしり並んでいた」。あるいは「名前は知らないけれど銀貨の形をした紅梅焼」も祭りの名物で、「白鼠が倉の戸前に手をかけると扉が開かれるにつれて、紅梅焼の貨幣がざくざくとこぼれ出る」カラクリ仕掛けが、何ともおもしろかった...などと描かれています。

「あやめ団子」「竹かんろ」に「葡萄餅」。

たぶんどれもが、露天の販売に適した駄菓子のようなものだったのでしょう。しかし、今ではあまり聞いたことの無いものばかり。いったいどんなカタチと味のものだったんでしょうか。その後に続く、「紅梅焼」は、今もどこかの名物の甘味のおせんべいのことかと思いますが、それが銀貨の形をして、しかもちょっとしたからくり仕掛けで売られていた?!興味深いですね。
ちょっとこの眼で見てみたいものです。

おもちゃのほうは、「海ほおずき、金魚、虫売り、まわり灯籠(=走馬灯)」などとずいぶん盛りだくさんです。中には、富士開山祭に付き物の「麦藁蛇屋」の記述もありました。「神社のすぐ下までくると、麦わらで作った蛇を売る店が並んでいた。まっかな舌をだした奇怪な蛇だった。大人はこれを買って帰り、台所にかけておいた。何かのおまじないになったのであろう。」
そして、渋沢氏は、この開山祭について「ともかく、浅草の縁日のうちで、お富士様は一ばん楽しいものだった」と締めくくっています。

当時の浅草界隈といえば今以上の繁華街。三社祭にほおずき市、ちょっと足を伸ばして朝顔市など、さながら祭りのメッカのような場所で、お富士さんの植木市が一番楽しかったというのですから、いったいどれほど盛大な祭りだったのでしょうか?興味はつきません。

さて、麦藁蛇の件は、7月1日の開山祭で詳しく書かせていただくとして、今日は趣向を変えて、以下、お富士さんの植木市の様子を写真でご覧ください。
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寸足らずの桔梗が咲いていると思えば...。
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蓮もある。
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「釣り偲」は、夏の植木市の雰囲気を添えて。
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こんな風に壇上に鉢を並べる風景がここの特徴。
そして、苔玉も多く扱われ、全体的には、街中の植木市はかくやといった感じ。

お菓子もおもちゃもそう変わったものはありませんが、いつもは静かな住宅街の一区画が一新。道路が、まるまる一本、これらのような植木の露天で埋まり、壮観な光景がくり広がります。

植木に関しては都内いちばんというのも、実際訪ねて深く納得の植木市です。
by michiru-hibi1007 | 2011-06-26 13:46 | 年中行事・祭・縁日