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1日1つの「日本的!」な楽しみ


by michiru-hibi1007
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柊の花                    辛巳(かのとみ)の日・旧暦10月27日

柊の花                    辛巳(かのとみ)の日・旧暦10月27日_c0205840_1554332.jpg


クリスマスにはケーキを飾り、年が明ければ節分の魔よけになって大活躍をする。
年末年始ともなれば、柊の葉ばかりが忙しく、そのちょっと前に咲く花のことなど、だれの話題にものぼりません。
11月中旬をすぎて、やっと冬めいてきた庭先に、ひっそり柊(ひいらぎ)の花が咲きました。
トゲドゲと鋸の歯みたいな葉っぱに似合わず、咲くのは純白の小花。
可憐というか清楚というか、その可愛らしさに近づいてみれば、ほのかにやさしい香りまで放つ。

柊は、モクセイ科モクセイ属、実は、金木犀や銀木犀と同じ種の樹木なので香るのも道理。といっても金・銀木犀のように主張して香るわけでもなくて、それら仲間の花よりずっと遅れて咲いたのが申し訳ないと言ってでもいるかのように、香りはそっと。
なので、その存在感もありません。
そっと咲いて、そっと香り、いつしか満開になったころ少しだけ辺りに華やぎをそえるがそれも短く、そして北風が強く吹く頃、いつの間にか枯れて散ってゆきます。

子どものころに住んだ家は、路地を入った突き当りにあって、それは、子どもでもふたりがすれ違うには狭い道。
わざわざその道に張り出すように大きな柊の木があって、学校に遅刻しそうだと急いではいつの間にか腕を傷つけ、ともだちと話に夢中になって足を傷つけ...なんだってこんな邪魔なところに生えているのか。
聞けば、その柊は家の鬼門を守る役割を持つんだそうで、猫の額の我が家の庭も、北東の表鬼門は柊が守り、反対側の南西・裏鬼門には、南天の木があって、これも邪悪なものの進入を防いでいた...らしい。
狭かろうと柊はそこに植えられる必然性があったということでした。
しかし、かすり傷とはいえ、肌を傷つけられて、少々厄介な木だなとでも思っているのは子どもばかり。ふふふ、本当にそんなチカラがあるのかしらとやや侮りつつ育ちます。
そして、大人になって、我が故郷にはなかった節分の風習...下町の節分は、鰯の頭と柊の葉で作った魔除けを門口に飾る...に出会ってそれはかなり強力に効きそうで、ちょっと見直してみたりします。

そうそう、クリスマスケーキに飾る赤い実の柊は、西洋柊といって違う種なんだそうです。庭先の柊の木が散って、赤い実を待ち望んでも、クリスマスを通り越して翌年の初夏、やっと生り始めたのはシックな紺黒色の実です。
そのまま待てば赤くなるのかしらね...と待ち望んでも、もちろん、地味な色合いのまま落ちてゆきます。

つまり、柊それじたいは、葉っぱのとげとげしたカタチ以外に派手さがすくなく、じっと黙って邪悪なものから家を守る。
しかも魔よけともなる尖った柊の葉は、若い木のときだけのもので、樹齢がすすんで、老木となるにしたがって葉っぱはまあるく小さくなって、樹木自体も低くなってしまうんだそうです。

...ああ、なんだか、植物なのに、ちょっと人間に似ていませんか?
無口なせいで報われず、それでも淡々と役割をこなして年取ってゆくようなヒト...。

だからせめて、身近に柊の木があるならば、冬のとば口に、そっと目立たず咲かせる花を今年はよーく愛でてやってくださいませんか。
by michiru-hibi1007 | 2011-11-22 15:52 | 花歳時記